豊田通商株式会社・vivola株式会社・まるたARTクリニックは愛知県県民文化局男女共同参画推進課と名古屋市男女平等参画推進課の応援のもと、働きたい!と希望する女性が、心も体も健康でいられるように、重要な情報をぎゅっと詰め込んだ、「女性活躍支援セミナー」を共催しました。
冒頭、愛知県の西元さんより、
女性活躍に関する取り組みを通じ女性が元気に働き続けられる愛知の実現を目指しているとご案内がありました。
名古屋市も、女性が輝くまち名古屋をめざしています。
続いてFlora株式会社CEO アンナ・クレシェンコさんより「経営に資するフェムテックの活用・女性の健康推進が経営課題を解決する道のり」についてご紹介いただきました。世界では39.6%の女性が、婦人科系の病気を抱えていると言われています。フェムテックという言葉は2016年頃からアメリカで使われ始め日本では2021年から急速に広がったそうです。性にまつわる課題の労働損失額や日本全体の労働生産性損失額の水位について説明がありました。
損失額は、
月経随伴症で5700億円
更年期障害で約17200億円
不妊治療2600億円とされ、健康課題による損失は年間約2.55兆円。昇進や定着にネガティブな影響も出るため、女性だけではなく男性も含めた会社全体の課題だと訴えました。アンナさんからは最後に「女性の健康推進で効果・企業価値を生み出す『投資』を実現しませんか?」と問いかけがありました。
「自分は会社にとってコストではなく投資されるべき対象なのだと実感することができた」と話す進行役の村西アナウンサー。
続いて院長からは自分の体を知ることの大切さ・プレコンセプションケアの重要性について解説がありました。
不妊治療と仕事の両立を支援する団体、「NPO法人フォレシア」代表理事、佐藤高輝さんには不妊治療休暇制度導入事例についてご紹介いただきました。
「努力しても報われない。治療がうまくいかないときは自分も落ちこんでいるのに、それを会社に報告をしなければならない辛さを、思い出しました。遠慮なく言ってねと声掛けを会社にしていただけると救われる女性もいるのではないかと感じた」と話す村西アナ。
最後は、関西テレビ村西アナと院長によるパネルディスカッションです。ディスカッションタイトルは「実体験からの学び」
36歳で選んだ「社会的適応による卵子凍結」・3回目の結婚・不妊治療を経て、41歳で第一子を出産、43歳第二子出産。2度の育休を取得後、復職した経験談を赤裸々にお話いただきました。
村西アナ
「関西テレビでアナウンサーという仕事に就き25歳~37歳までの12年間、平日は休みなく夕方のニュース番組を担当していました。仕事が楽しくて仕方ない20代を過ごしました。子どもが欲しいという気持ちはあまりありませんでした。でも30代に入ると、人並に結婚をしなければという焦りもあり、30歳で最初の結婚をしました。けれど当時は、あくまで仕事優先。家族を増やすという話し合いもしましたが、結局お互いに多忙ですれ違い、32歳で離婚。まわりの友だちがほとんど結婚・出産をした36歳のとき、そろそろ真剣に考えないと将来子どもを持てないかもしれないと思い始めました。友人に誘われ36歳で、卵子凍結。卵子を育てるための自己注射が痛くてたまらず値段が高いけどあまり痛くない注射を選択しました。採卵は一回のみ、14個凍結。ママになれる確率は80%と当時の主治医に言われました。採卵後、お腹が痛くて歩くのもままならずかなりきつくて両親に車で迎えにきてもらいました。帯のニュースもやっていたし、かなりの金額もかかったので採卵1回でもう無理だと思ってしまいました。これだけやったんだからきっと大丈夫だろうと」
院長
「卵子は、精子を受け入れる力があるのか、相手の精子がどうなのか、で受精した後の分割が違ってくるので卵子をとっておくだけでは不透明です。もちろん出産率100%ではないですし、採卵する時期も大きく影響するものではありますが卵子凍結は、将来の不妊予防、不妊治療の軽減につながることもありますよね。若い卵子の方が出産率が高いのは事実です。何もしないよりは・・・心の持ちようとか、良い面もあるのでは。当院では凍結卵子を使って出産された事例もあります。自分で能動的に選べる社会であってほしいですね」
村西アナ
「38歳の時に現在の夫と出会って、39歳の時に不妊治療を開始、最初から体外受精をスタートしました。医師からは『凍結してある卵子は2人目のために置いておき、今はまだ卵が採れるので採卵しましょう』というアドバイス。今日が一番若い日だから、というフレーズが響きました。実際に不妊治療のステージに入ると、採卵だけでなく卵子と精子の受精する力がとても重要ということがよくわかりました。10個卵子が採れたけれど、中々受精卵にならならなかったんです。治療当初『確率的には3回移植すれば、一度は着床する』と聞いていたので3回目はうまくいくだろうとワクワクしていました。でも、結果は着床しなかった。そのとき夫に『しんどいから治療を休みたい』と言われました。その時の私の気持ちは『ちょっと待って、体がしんどいの全部私やから!なんでほとんど何もしていないあなたが疲れたって言って休まないといけないの?』でもよくよく聞くとこの歳になって『子どもができるかもしれない』『ああだめだった…』『今度こそ親になれるかもしれない』『ああ今月もだめだった…』という気持ちのアップダウンに疲れてしまったと。少なくないお金もかかるものだしその後の育児を考えても、きちんと夫婦の意見を合わせた上で進めなければうまく行かないと思い、一旦治療の休憩をすることにしました」
院長
「妊活って2人の子どもを授かるのに、女性が大変なばかりで男性はなにもできない状況が続きます。女性の生理がきてしまったショックが理解できない。でも一方では、奥さんのことを想っていて、自分はどうすることもできないことが辛いと言ってくれる男性もいる。奥さんのことを想って、休もうと提案することが選択できる一番の優しさという考え方もあるのかもしれません」
村西アナ
「私の治療に戻りますが、犬を飼い始め、朝6時に散歩をして、仕事に行って、夜は夫婦でお酒を飲んで。そうした時間を過ごしていくうちに夫がまた前向きになってくれて治療を再開しました。その後、切り札だった36歳の時の卵子を3つだけ融解して受精させ胚盤胞になりました。が、子宮内に戻すもまたも着床せず。凍結卵子は、私の中で『最終手段』であり『困った時の切り札』だと思っていたので、結果にはかなりショックを受けました。落ち込みましたが、それでもまだ私は『諦めるのは、やれることをすべてやってからだ!』と、この頃に自分の体質改善を始めました。鍼の治療、漢方を飲み始め、深酒をやめる、朝ご飯を食べる、味噌汁を飲む、たくさん歩く、体を温めて冷えるようなことをしないなどを徹底し、40歳で3回目の採卵へ挑みました。その規則正しい養生生活がよかったのか、採卵では卵子が21個とれ、顕微授精後に12個胚盤胞になりました。その時まで私は、胚移植をした後の仕事を事前に調整してしまうと着床しなかったときに『お腹に赤ちゃんもいない、仕事も暇』という状態になったらそれこそメンタルが持たないと思って移殖後の仕事の調整を一度もしていませんでした。でもその時初めて直感で『仕事を断らなければならなくなるかも』と感じ、そのころ担当していた釣り番組のスタッフに伝えました。自分の体の追加の検査をいくつか挟んで万全の状態にしてから、12個の胚のうち、できた受精卵の中で一番グレードのいい受精卵(5BB)を移植して、着床しました。体外受精としては通算8回目の移植でした。 不妊治療中の方は、ベビーカーを押すお母さんを見ると落ち込む、というメンタルになりがちであると言われます。私もその気持ちがわかるときももちろんありましたが、基本的には『私も抱っこしたいな』『あんな風に一緒におでかけしたいな』と前向きに考えるようにしていました。
実は子どもに関するボランティアを長年続けていました。余談ですが『ボランティアをしている人は人生の幸福度が高い』という研究が色んなところで行われています。私の実感としても、そう思います。子どもが欲しいという気持ちを、絵本の読み聞かせで、『みなさんが大切に育てているお子さまの成長に私もちょっとだけ関わらせていただいている』という風に満たしていたように思います。そして自分もこんな風に絵本を読んであげたい、子どもを育ててみたいという気持ちを諦めず前向きに持ち続けていました」
院長
「働きながら苦しい不妊治療の中で、自分を癒せる存在を見つけるかが大切ですね」
村西アナ
「私は仕事と不妊治療の両立は上司二人に正直に伝えていました。妊娠するまでの1年半はそっと見守ってくださり妊娠を報告するとすぐに色々な面で気遣ってくださいました。ありがたかったです。通算10回目の移植で下の子を年子で授かりいま、その子が生後10か月になりました。2人とも保育園に預けて、アナウンサーの仕事に復帰しています。時短勤務で働いていますが、同僚のお子さんの体調不良の時に私が代わりますと言えることがとても嬉しいです。フォローしていただいた分、みなさんにお返しして働ける毎日が充実していますし、元気にかつ楽しそうに保育園に通ってくれる2人に感謝しています。」
院長
「女性が治療を受けるのは、それだけでも大変です。男性はプライドをもって仕事をしている。でも女性だってプライドをもって仕事をしています。生物学的には、男性は子ども産めないので、女性が生むしかなくて子どもを産む選択をするときに社会として会社として理解をしてサポートをする環境ができてほしいなと強く感じます。日本の社会は、女性だって背負ってくれている。不妊治療や、子育てに関しての男性の理解のなさが悲しいのでこういったセミナーで女性ってこんなに大変なんだよということを理解してくれると嬉しいです」
村西アナ
「いま、まさに治療当事者の方へ伝えたいことは、一回一回の採卵や移植で一喜一憂していたら心も身も持たなくなりがちです。楽しみを見つけて、治療がダメだった日はとことん自分で自分の機嫌をとってあげてください。そして私みたいに8回目や10回目で着床する人もいるということを知ってもらえたら嬉しいです。夫と二人で生きていくという道も探りながら、悩んだりぶつかったり支え合ったことで家族として強くなれたので、2人で頑張る時間は絶対に無駄にはならないです」と締めくくりました。
参加者の方の感想をご紹介します。
✓定期的にこのようなセミナーを開催してほしい。
✓具体的なお話がお聞きできて良かったです。仕事と人生の両立、自立やキャリア形成が叫ばれる中ですが、身体的なタイムリミットは必ずあるので、知らなかった・時すでに遅しは悲しすぎますので…。
✓女性活躍支援について網羅的に学ぶことができました。自社の状況とすり合わせ、施策に活用させていただきます。
✓自分自身が経験していなかったこともあり、不妊治療に臨む方が仕事との両立で感じるハードルや難しさ、そこに対してあるべきサポートを制度的な視点や、マインド・寄り添い・具体的な声掛けといった肌感覚に近い視点まで知見に触れることができて大変参考になりました。また、女性の体調不良に関して、月経や妊娠・出産前後、ならびに更年期まで、一概に原因で切り分けられない大きな個人差がある一方で、経済的なロスになっているという視点も新鮮で、どういうアプローチができるのか考えさせられました。
✓大変ためになるセミナーでとても勉強になりました。今後の社内の健康管理や制度見直し等の参考にさせて頂けたらと思います。
✓ふんわりとしか想像していなかった治療について、実体験をもとにお話していただき、もっとしっかりと自分の身体と向き合わなければならないと感じることができました。企業側のサポート体制についても改めて確認しようと思います。
✓同じ女性として胸に来るものがありました。このセミナーを社内へ展開したいです。
✓村西さんや丸田先生のお言葉が、不妊治療をしている女性の気持ちを代弁されていると感じました。前向きに不妊治療にトライし続けた村西さんに勇気を貰いましたし
「女性もプライドを持って仕事をしている」という丸田先生の言葉が心に残りました。
✓妊活や時短勤務の社員をサポートする側の社員にスポットがあたるような施策や制度があれば今度聞いてみたいです。