いつ来るかわからない未曾有の災害。
緊急時にどう備えるか、どう動いたらよいかを確認しておくことは重要です。
「今周期、体外受精の予定なのに、災害にあってしまった!」
「明日は移植日。でも交通機関がストップしてクリニックに行けない?!」
こんなことが起こるかもしれません。
災害時における診療時間の変更や臨時休診などのお知らせは当院のホームページやブログ、院長が単独運営しているLINE公式アカウント、Instagram、Xにて情報をお伝えします。SNSの登録をお願いいたします。
✓ まずは身の安全を!✓ 電話や公式LINEがつながりそうであれば、クリニックに指示を仰ぎましょう
✓ 薬や注射が切れてしまっても、慌てずに医師に相談してください
大規模な災害が発生して、胚(受精卵)の培養の継続が困難であると判断した場合には・・・
培養中の胚は発育のステージや培養の経過日数に関係無くすべての胚に対して凍結保存を実施します。凍結をすることで胚の成長を人為的に一時ストップし、治療の再開ができる目途が立ち、環境が整った時に凍結保存した胚を融解し培養を再開して胚を成長させる、あるいは融解をしてお腹の中に戻していく凍結融解胚移植という手法を取ります。培養室・外来の薬剤保管には数時間程度電気を供給し続けられる無停電電源装置を設置しています。医療機器を設置している台は、耐震性を考慮しており、万が一異常が発生した場合は、即座にスタッフにメールで異常を知らせるシステムを導入しています。業務時間外でも、スタッフが迅速に対応できるようにしています。みなさまからお預かりしている大切な胚を、子宮の中にお返しする日までクリニック全職員で、最善を尽くしてお守りします。
こんな時、胚はどうなる?
移植当日に災害発生!凍結してあった胚を融解していた場合は・・・
緊急時対応として、再凍結を行います。(再凍結はしないに越したことはありませんが、
一定の回数までは大丈夫だと研究で明らかになっています)
途中で凍結をしてしまっても大丈夫なの?
受精卵は、採卵から何日目でも凍結保存をすることが可能でどの時点で凍結をしても受精卵を劣化させることはありません。停電が起きた際、顕微鏡にて受精卵の凍結保管を液体窒素で行います。(顕微鏡は電気を使うため、非常用電源から電気を使用します)電気の供給が止まった際の一番安全な保管方法は凍結保存となります。
凍結保管タンクにはいくつかの種類がありますが、強度に優れている軽量アルミニウム製を材質としたタンクが多くの施設で最も使用されています。マイナス196℃の超低温下に長期間耐えうる内槽と外部からの衝撃に耐えうる外槽の二重構造になっており内槽と外槽の間にある空間には液体窒素の蒸発を最小限にするための特殊高真空断熱が施してあります。
タンクのサイズはさまざまです。一般的にクリニックで使用されているものでは満タンの状態で約35~50ℓ程度の液体窒素を充填することが可能です。頻繁にタンクの蓋を開け閉めしたり、揺らしたりということが無ければ約1ヶ月~2ヶ月程度は液体窒素がタンク内に残存する仕組みになっています。通常、クリニックでの運用としては、毎日液体窒素の量をはかり、毎週(※使用頻度が多い場合は週に2回程度)各タンクに液体窒素を継ぎ足し、常に凍結保管タンク内の液体窒素が満タンに近い一定の状態を作り出しています。
クリニックの災害に対する心構えとして行っている取り組み
✓ 災害時の緊急対応マニュアルの作成
✓ 年に一度、ビル管理会社主催の防災訓練への参加
✓ さまざまな災害から自分および患者さまの身を守るため年に一度、全員参加のクリニックの訓練
✓ 医療用ガスの安全講習会の参加
✓ 全員参加の救命救急講習会の開催
✓ 医療安全チームから毎月のミーティングでクリニックの改善策について報告
✓ 年に一度、ビル内の停電を想定して外来・培養室の非常用電源の作動確認やすべての医療機器の再起動などの緊急時対応を行っています。受精卵の培養には、電気を使用します。培養室の停電時を想定して部屋の電気をすべて消し、凍結までの作業を確認します。
妊娠を願うカップルが安心して卵子や受精卵を託せるように、防災対策を今後も定期的に見直ししていきます。