流産とは?
妊娠したにもかかわらず、妊娠の早い時期に赤ちゃんが亡くなってしまうことを流産と言います。医療機関で確認された妊娠の15%前後が流産になります。また、妊娠した女性の約40%が流産しているとの報告もあり、その90%以上は妊娠10週未満の初期に起こります。流産は、誰のせいでもありません。決して自分を責めないでください。
流産の原因
✓ 受精卵の染色体異常
流産の60%から80%に胎児の染色体異数性が見られることが絨毛染色体検査の結果から明らかになっています。
✓ 母体側の原因
✓ 男性側の原因
近年、男性側の要因でも流産が起こることが示唆されています。
流産の時、自然排出を待つか、検査をするかどちらがいいの?
流死産の原因が胚の染色体異常に起因した胎児側の要因であるのか、何らかの免疫学的、内分泌学的異常に起因した母体側の要因であるのかを判別するために、検査から得られる情報の価値は大きいと考えます。そして今後どのように妊活をしていくか作戦をたてることができます。保険適用・先進医療の検査、それぞれにメリットデメリットがあるため診察室で医師に相談してください。
保険適用での検査
2022年4月に保険適用となった染色体検査は「G-band分染法」といい10日間ほど採取した絨毛を培養する必要があります。手術で清潔に採取したものしか使用できないこと、また培養するときに細胞をコピーして増やしていくため時間的制約と技術的制約という問題点があります。
先進医療「流死産検体を用いた遺伝子検査(NGS)」
次世代シーケンサー(Next Generation Sequencing;NGS)を用いた流死産絨毛・胎児組織染色体検査です。流産から時間が経っている場合(凍結保存してある場合)や、
内容物が自然に排出された場合のような、既に保険適用されている「G-band分染法」では解析できない状況でも検査が可能となります。
流産の定義とは・・・妊娠22週未満の子宮内妊娠の喪失
✓ 生化学妊娠(化学流産)
妊娠反応が陽性となるが胎嚢が確認される前に出血とともに消失する。不育症には含めません。
不育症の定義とは・・・流産あるいは死産が2回以上ある状態
※生児獲得の有無は問わず、流産または死産は連続していなくてもよい
※日本不育症学会としての提言
✓ 習慣流産 3回以上連続する流産(不育症に含まれる)
✓ 反復流産 2回以上連続する流産(不育症に含まれる)
愛知県では、不育症検査に対する助成を行っています。先進医療として実施された保険診療適用外の「流死産検体を用いた遺伝子検査」を受けた場合、費用を助成する事業です。
助成金
1回の検査に係る費用の7割を助成。ただし、上限6万円となります。
※検査代は103,000円ですが、患者さまのご負担は約43,000円で検査を行うことができます。
※民間保険で先進医療特約に加入している場合、自治体の助成金にプラスして保険の給付金がおりる場合があります。
対象
既往流死産回数が2回以上の方(過去に1回以上の流産歴があり今回の妊娠で臨床的に流産と診断された方)
年齢や所得などの要件はありません。当院は2023年2月1日に、東海地方で初めて、先進医療「流死産検体を用いた遺伝子検査(NGS)」の認可施設となりました。
次のようなケースでは流産の検査をお勧めします
✓ 流産を繰り返し、お子さまがいない場合
✓ お子さんはいるが複数回流産を経験している場合
✓ 妊娠10週以降の流産・死産を1度でも経験した場合
✓ 過去に重症妊娠高血圧症候群や低出生体重児出産の既往がある場合
✓ 生化学的妊娠(化学流産)を繰り返す場合
✓ 前回が流産に終わり、2回目の妊娠である今回の妊娠初期に
特に慎重な対応が必要な場合
✓ 他院で不育症の検査を行ったが、結果の詳しい説明を聞きたい場合
✓ 他院で治療方針が決まったが、セカンドオピニオンを聞きたい場合
✓ 不妊治療を受けているが、妊娠した際に不安がある場合
✓ その他流産の経験はないが次の妊娠に不安を覚える場合
(膠原病・血栓症などの内科的持病がある、
子宮筋腫や子宮腺筋症などを指摘されている場合など)
当院では流産を2回以上繰り返したカップルを対象に、原因を検索するための各種検査を行なっています。保険適用と保険適用外の検査があり、併用することはできません。どの検査を実施するか、医師と診察室でご相談ください。
不育症の原因を探る検査
✓ 子宮形態検査
✓ 血液一般検査
✓ 血液凝固系検査
✓ 染色体検査
✓ 内分泌検査
✓ 抗リン脂質抗体検査
✓ 自己抗体検査
ネオセルフ抗体検査
✓ 抗核抗体検査
✓ 子宮内検査
ERA・ERPeak℠ 検査
EMMA/ALICE
子宮内フローラ検査
✓ Th1/2比検査
受精卵を攻撃してしまう免疫学的拒絶が原因と考えられる不育症や着床不全の検査です。胎児や胎盤を攻撃する働きのあるTh1値が高くなるほど、妊娠の維持ができない状態になることがわかっています。免疫抑制剤であるお薬(保険適用外)を内服することにより血中のTh1値を下げてTh1とTh2のバランスをとり、胎児や胎盤に対する拒絶反応を抑え妊娠の継続を維持できるよう治療します。他院で、流産後、Th1.Th2検査をしたら数値が高く「自己免疫が理由かもしれないがうちでは治療ができない」と言われた方の治療を当院では積極的に行っています。
✓ 絨毛染色体検査(G-band分染法・手術が必須)
✓ 流死産検体を用いた遺伝子検査(先進医療・自然排出も可)
✓ 着床前診断(受精卵・染色体検査)( PGT-A・SR)
流産をくりかえす人の85%が、適切な治療で、無事に出産までたどり着くことが分かっています。ぜひご相談ください。